<p align="right"><span class="small-text">公開日: 2023-9-28<br>更新日: 2025-10-7
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# 即自と対自
人は自分がどのような世界観を持っているか、自己認識を持っているか、人間観を持っているかだいたい気付かずに生活している。それを哲学では「即自(独 an sich)」と表現する。
対して、何かテキストを読んだり思想を学んだりする過程は、自分がどのような世界観や人間観、自己認識を持っているかに直面し(だいたいそれはみすぼらしく、異様)、その上でそれらを変化させていく過程となる。これを対自(独 für sich)と言う。
哲学を学ぶセンス、テキストを読むセンスというのは、即自的なものを対自的なものに変化させていく精神の運動のセンスとも言える。暗記力や語学力以上に、これがないとかなり厳しい。
つまり、磨くべきはこの精神の運動のセンスということ。そのためには、今の自分が持っている常識や信念にしがみついていてはいけないということ。それは精神の運動の拒否であるので。