<p align="right"><span class="small-text">公開日: 2026-2-20<br>更新日: 2026-2-21 </span></p> # イランとアメリカ・イスラエルについて ### 新たな侵略 イランとアメリカ・イスラエル間の緊張が高まっている。 現在はイスラームにおけるラマダーン月であり、そのような重要な時期に強度の軍事的圧力をイランにかけるアメリカ・イスラエルの姿勢をまず批難したい[^afda]。サウムを行い、同胞意識と霊性を深める時期に、このような事態になった全世界のイスラームの民の苦痛はいかほどか。 キリスト教国家アメリカがユダヤ教国家イスラエルが組んでイスラーム教シーア派国家イランとする戦争は、啓典の民同士の戦争である。私もキリスト者として、立場を表明する必要がある。 私は中東におけるアメリカとイスラエルをジェノサイド国家と位置づけており、イランを支持している。 イランは故ホメイニ師が、アメリカの傀儡国家であったパフラヴィー朝を打倒し、シーア派イスラームによって建国された主権国家だ[^gwe3]。 現在、イランが進めているウラン濃縮において、様々な見解があるのは理解するが、アメリカとイスラエルの主張を武力を用いて押しつけるのは、明らか主権侵害である。トランプはアメリカのイラク・アフガニスタン占領政策の歴史的過ちを無視し、同じ過ちを再度繰り返そうとしている。 ### カリフ制再興という重大事 また、キリスト者として、イランを支持する重大な理由がある。 その理由は、オスマントルコ帝国の継承国家であるトルコ共和国(スンナ派)、ペルシャ帝国継承国家であるイラン・イスラム共和国(シーア派)、ムガル帝国を継承するタリバンが統治するアフガニスタン・イスラム首長国(スンナ派)が、カリフ制[^fsfa]によるイスラーム世界の統一事業を継承できる可能性を持っているためだ。 1924年にオスマントルコ帝国が滅亡し、カリフ継承が途絶えて以来、イスラーム世界は西欧流の領域国民国家に分裂し続けてきた。その過程で多くの血が流され、サラフ主義を母体としたジハード主義をとるIS等も出現することとなった[^p87897]。そして、ジハード主義は早急なタクフィールを行い、イスラーム世界を分裂させてきた[^sasasa]。 この図式は、西欧キリスト教社会がカトリック・プロテスタント間が相互に異端宣告を行い、西欧が30年戦争により大量の死者を出した図式と重なる。私たちキリスト教の過ちを、西欧文明の押しつけを通して、現代のイスラーム世界に押しつけるのは間違っている。 同時に、私たちが生きるアジアにも、インドネシアやパキスタンを中心として多数のイスラーム教徒が生活している。アジアの平和の意味でも、イランの主権の尊重は重大事でもある。 今後、新たなジハード主義を生まず、分裂と欧米からの介入を解決するには、イスラームがカリフ制を復活させる必要があることは、イスラーム全体の共通認識となっている。カリフ制が再興されてこそ、キリスト教等もイスラームとの対話と共存の窓が開けるだろう。 ### 平和に向けて マルコ福音書は「神の支配(国)が来る」というイエスの言葉を記述している。 イスラームにおける「神の支配」であるカリフを中心としたイスラームの家(ダール・アル・イスラーム)が再興され、イスラームの家に住むキリスト教徒や、他の文明共同体と重層的な平和関係を築く日を、キリスト者として待望している[^fafas]。 天には栄光、地には平和。私たちの主において。 [^fsfa]: カリフ制については下記論文を参照。<br>中田考, 2010, 「イスラームの今日的使命 : カリフ制再興による大地の解放」『山口大学哲学研究』17巻: 65-94, (https://petit.lib.yamaguchi-u.ac.jp/16937). [^p87897]: 松山洋平, 2017,『イスラーム思想を読みとく』 筑摩書房, 102-. [^fafas]: イスラームの重層的普遍主義に関しては下記論文を参照。<br>レジェプ・センテュルク, 2011, 「多様性の中における統一 : 開かれた文明としてのイスラーム」『一神教学際研究』(7): 53-66, ( https://doshisha.repo.nii.ac.jp/record/580/files/r001000070007.pdf ). [^gwe3]: シーア派について詳細は下記著作を参照。<br>平野貴大, 2024,『シーア派』作品社. [^sasasa]: SYNODOS, 2017,「なぜムスリム社会はISを『破門』しないのか?」, SYNODOS,(2026年2月20日取得, https://synodos.jp/opinion/info/20691/ ). [^afda]: ラマダーン月については下記記事を参照。<br> 中田考, 2026,「ラマダーンとイスラエル」, Note,(2026年2月21日取得, https://note.com/hassankonakata/n/n4c69345c7686).